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惑星クレタサス・レポート(3)-1

忘れた頃にやってくる、月刊ペースでお送りしている
「恐竜惑星Broncosaurus Rex」の紹介です。(前回は7/5に掲載)
今回は惑星クレタサスに植民するまでの人類の歴史について。
何でこんな宇宙の果てまでやってきて、未だに南北戦争やっとるのかというお話です。

ちょっと長いので、今日明日の前後編で記録しました。(^v^)ノ

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 この世界の2202年は現実と違う。シャーマン将軍の進軍はアトランタに達する前に撃退された。アブラハム=リンカーンは第三次ゲティスバーグ会戦の2年後に暗殺され、奴隷解放令は布告されていない。奴隷の解放は、国土防衛の英雄ロバート=E.リー将軍が南部連合大統領となり、彼の人道主義政策の一環として1881年に実行された。南部連合は北部連邦の侵入を退けたものの、逆襲して反攻作戦をするには国力が至らなかった。その後偶発的な衝突はいくつかあったものの、20世紀中頃までは総じて沈滞した南北冷戦の状態が持続されていく。
 南北国家間の戦争は宇宙開発においても引き続き行われた。これが20世紀末の月面到達競争である。ユニオンはコンフェデより産業力で勝るものの、冒険精神には欠けていた。リッチモンドのコンフェデ政府は、ユニオンの科学者たちを拉致し、同じくユニオンの技術を盗用した上で、探査ロケットのディキシー1号(Dixie 1)を製造する。ディキシー1号は無事宇宙航行に耐え抜き、ランス=ウィッタクル飛行士は月面に第一歩を踏み出すことに成功した。かくてコンフェデは月の領有を宣言したのである。
 この成功は一連の流れの始まりにすぎず、その後もコンフェデは勢力を強引に拡張した。ユニオンとの軍事境界線を北に押し上げ、メキシコと連合を組んで中米の覇権を握った。コンフェデの宇宙飛行士“ディキシーノート(Dixie-naughts)”たちは月に向けて何度も打ち上げられ、ユニオンは成層圏外からの攻撃に恐怖しなければならなくなった。
 ユニオン政府は急いで独自の宇宙開発プログラムに着手する必要に迫られた。そしてユニオンは、軍事、経済、そして学術の全てにおいて、コンフェデを遥かに上回る基礎国力を有していたがゆえに、彼らに追いつくまでさほど時間はかからなかった。事実、ユニオンは極秘裏に最初の航宙門を発見し、革新的な宇宙空間航行技術を手に入れることに成功している。こうして今度は火星到達競争が始まった。
 州を争う戦いは、惑星を争う戦いに転化した。太陽系内の植民地獲得競争の渦中において、外惑星で戦端が何度となく開かれる。そして宇宙開拓民の被害は異様なレベルにまで上昇した。例えば移民初期の火星植民地は、数週間から数ヶ月に及ぶ戦闘だけで、全て灰燼に帰してしまっている。しかしこれらの消耗戦は、ユニオンが航宙門の確保を公表したことにより、劇的に局面が変わることになる。

▽銀河開拓時代(Galactic Expansion)

 航宙門とは、ある一定の“通常”空間の点と点を、短絡的に結合させるものである。超空間の中では距離という概念はなく、遠く離れた地点に直ちに接続する――あなたが一歩踏み出せば、そこは突然到達地点なのである。その間何も見ることはできないし、どの地点に出るのかわからないし、常にそこに繋がっているとも限らない。なぜか航宙門が繋ぐ2つの世界は同程度の文化レベルで確定されており、開通や閉鎖については基本的に予期できない。
 ユニオンが最初の航宙門を発見したとき、それはあまり遠くの地点まで繋がっていなかった。踏み出す勇気のあったごく少数の探検家が航宙門を探査進入していったが、再び戻ってはこないようだった。そして以前と同じく、コンフェデはユニオンの先端技術を食い物にしようとしていた。
 再びコンフェデは諜報員を用いて技術者を誘拐し、画期的な計画に着手する寸前のユニオン側の技術を略奪する。そしてさらに約100隻の小型宇宙船を建造配備して航宙門へ手当たり次第に放り込んだ。これらの宇宙船には数世帯の家族が同居して乗り組み、およそ1年間はまかなえるだけの食糧を備えていた。彼らは到着した先で植民地の開発を行い、そしてもし可能ならば、航宙門を再び戻って報告を送付した。これらの成果が組み合わされて航宙門の航図が完成し、植民地競争の幕が切って落とされたのである。
 ユニオンもこの動きに続く。間もなく地方の惑星は、宇宙を二分する両勢力の拮抗した政治的圧力――それは全く異なる支配戦略であったのだが――を受けることになった。ユニオンは産業開発に重点を置き、鉱物資源が豊富な惑星やアステロイド帯を探した;こうして開発された鉱山植民地からは原材料が輸出され、その引き換えとして生き延びるための生活必需品は母星に依存し続けるままだった。対極的にコンフェデにおいては、農耕に重点を置く自給自足の植民地開発を前提とした。開拓民は拡大再生産を基本とし、自分の領地を広げ、まるで箱庭のようなそれ自体で完結した農村型共同社会を全宇宙に作り上げた。
 航宙門の位置を示した航図が詳細になるにしたがって、植民地競争に勝利するため、コンフェデは莫大な国費を費やさざるを得なかった。技術的には劣るものの、コンフェデが有する開拓宇宙船の隻数は、この頃ユニオンの2倍強にまで達していたのである。
 両国家ともに宇宙進出という熱狂に気をとられ、母星である地球に関する事柄については、あまり注意を払っていなかった。このことにいち早く気づいたユニオンは、コンフェデ側の油断を利用する計画を立てる。2134年、ユニオン軍はリッチモンドを急襲。大攻勢を開始した。
 完全な奇襲による第一撃でコンフェデの首都リッチモンドは壊滅的打撃を受けた。ユニオンはさらに戦果を拡大させて、地上における全体的勝利を手中に収めた。両国の宇宙船が地球に戻ってきてみれば、そこには陰惨で血まみれの戦場が北アメリカ大陸全体に広がっていた。
 コンフェデ軍はユニオン軍の攻勢を阻止することができず、遥か南にまで戦線は押し下げられた。コンフェデの軍事資本は宇宙船開発及び軌道防衛兵器に向けられていたので、ユニオン軍の地上兵力に対抗する手段は僅かしかない。国家非常体制はぎりぎりの状態となり、コンフェデ軍の将帥達は破局が近づいていることを認めざるをえなかった・・・

(明日へ続く)
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by mccoy1234 | 2005-08-23 01:36 | TRPG
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