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惑星クレタサス・レポート(3)-3

これを読んでいる方、台風は大丈夫ですか?
(余計なお世話かもしれないが・・・)
では、「恐竜惑星Broncosaurus Rex」の歴史、3夜目の覚書。

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▽到達点の分散

 間を置かずにコンフェデは真の連合政体となった。銀河中に散らばった数百もの地方権力が集約されたのだ。各星系における地方政府は数百万人の人口を有するが、中にはわずか千人単位で数えられるものもあった。居住可能な地域には新しい都市が建設され、大転進によるパニックは、やがてすぐに退屈な平和の再建へと代わった。
 コンフェデは亜人類の惑星にも接触する。それらの惑星の大部分の地表には地球から持ってきた農作物を栽培したが、他の多くの場所では土着の動物を飼い慣らして、その惑星独自の植物を栽培する手助けをさせたりもした。2145年、コンフェデの開拓者達は惑星スクレイ(Scray)において、初めて知性を有する亜人類とコンタクトした。そしてその後も次々と他の亜人類と接触していくことになる。
 各所で組織された地方政府は、緩やかな統治を行う中央政府にゆっくりと従属していった。人々が過ごす生活は、地球にいた頃と大差がなくなってきた;こじんまりした植民地で農業を営むのだ。しかし19世紀の地球と違って、南部連合初期の汚点となっていた奴隷制度は喪失している――全ての人間がシチズン(一般民)なのだ。そして全てのシチズンは平等である。外宇宙環境下での奇妙な生活は、人間同士の互助精神をより強固にすることとなった。
 航宙門の使用および大転進の遂行は、技術革新に予期せざる効果を生んだ。私達の知っている技術のうち、いくつかはまだこの世界において開発されていない。たとえば、ユニオンとコンフェデのどちらとも、原子爆弾を製造していないのである。航宙門は超空間航行を保証し、そのため容易に光を超える速度での航海が可能となった。そのおかげで流線型の船体工学などを考える必要もなくなり、数多くの宇宙船は1800年代の帆船のように華美な装飾が施されている。
 しかしそれ以上に、コンフェデの農村特有の保守頑迷さが、技術革新を妨げる要因の最たるものだった。ユニオンの力強い産業力と確立された工学理論は、すぐさまコンフェデを引き離してしまった。2100年代中葉において、コンフェデ兵士が古式ゆかしい弾丸射出式の小銃装備であるのに対し、ユニオン兵士は実験段階ではあるもののレーザー小銃の配備がスタートされている。大転進によってコンフェデ社会がいったん分解されたことも決定的で、ユニオンの日々進歩するテクノロジーに比べて、その差は10年以上も開いてしまったのである。
 コンフェデが宇宙へ飛び去った後、残されたユニオンは北アメリカを独占領有することになった。この大陸の南半分は完全に廃棄されていたので、ユニオンは再び開拓時代を体験することになる。コンフェデ時代の黄金色にはためく小麦畑は鉱物資源の採掘場に変わり、大量生産工業がより加速していった。
 ユニオンは宇宙開発を継続していたが、思想哲学により、ユニオンとコンフェデの間には決定的な違いがある。ユニオンは工業発展を望み、コンフェデは農業優先を望んだ。ユニオンは地球を領有し、コンフェデは数多くの開拓植民地を領有している。やがて戦争は膠着状態に陥った。公然たる交戦行動は次第に沈静していくものの、未だに両国家間で恒久平和条約は締結されていない。
 過去においては、ユニオンとコンフェデは世界の指導者の座をかけて相争った。しかし現在においては、このように明確な対立関係ではない。ユニオンは自らの民主主義と経済支配力をゆっくり浸透させていこうとしている。
 北米経済圏を掌握したユニオンは、次の標的としてヨーロッパ経済圏を自分の経済ブロックの中に吸収させた。新規格の連邦政府は国家連合体であり、この輪の中に“招かれた”国家はユニオン主導のスーパーエコノミーの中に組み込まれることになる。中国、イギリス、フランスなど、ユニオンの経済ブロックへの参加を拒否した国家群には、引き続いて荒廃した戦争がもたらされた。
 コンフェデと同様にして、これら反体制の国家も宇宙へ転進させられた。そして転進の途中で、各国家の権力体制は解散してしまう。続く結末としてこれら避難民を乗せた宇宙船団は、それそのものが準国家として団結し、ここに自由航民団(The Free Fleet)の結成が宣言されることになる。
 ユニオンのあからさまな野望に際限はない。コンフェデの逃散を許したことは精神的な棘となって引っかかっている。ここに至り、地球は再び星々の征服を望んでいるのだ。
 亜人類であるスクレイ人達から獲得した技術を流用して、ユニオン軍は二足歩行が可能な戦車機甲歩兵(Ironcrad)を開発した。歩兵の汎地形対応力と戦車の火力を備えたこの兵器は、戦力比で言えば従来の戦車2台分、コンフェデ軍の旧式軍用車輌では4台分に相当する。この機甲歩兵を戦場へ投入することにより、コンフェデ軍に決定的な破滅をもたらすことができると、ユニオン軍は固く信じている。機甲歩兵の配備は間もなくであり、コンフェデの希望の星である惑星クレタサスが最終試験場として選定されたらしい。
 これが西暦2202年における銀河の状態である。自由航民団は星間を放浪し、コンフェデは散らばった開拓植民地を擁護し、そしてユニオンは、来るべき戦いに備えているのだ。
by mccoy1234 | 2005-08-25 22:48 | TRPG
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