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唐突にミニパロディ小説 「茶色いゲーム」(その3)

今でもよく覚えている。
ある日、今年からユニホームを茶色に新調したマリノスのサッカー中継を見ながら
ゲームでもやらないかとマッコイを誘ったら、これが爆笑ものだった。
なんとやつは手提げ袋に『茶色財団』発行のゲームを全て詰め込んできたのだ!
TRPG、シミュレーションゲーム、マルチゲーム、カードゲーム・・・
何から何まで茶色のパッケージで、6面体ダイスまで茶色ときた。
「どうだい。いろいろあったが、こいつらはサプリメントがたくさん出ていて、
 ルールサポートも充実してるし、ちゃんと発売日は店頭に並んでいるんだぜ。
 D&Dのベーシックセットであんなに大騒ぎするんじゃなかったよ」
マッコイの言葉が終わらないうちに、
ダイスはボックスセットの蓋を開けたときに転がり出て
いかれたようにテーブルの下へ潜り込んだ。
なんだ、なんだ、茶色を誉めたって、
俺は持ち主にだって、誰にだって従いやしないぞ! とでも言うかのようだ。

ここでマッコイは唐突にハッと気づいた。
「まさか、お前もか?」
「ご名答、見ろよ」
俺はテレビの傍に置いたカラーボックスを指さした。
そこにはつい最近購入した最新のプレイステーション2を設置しておいたんだ。
本体はもちろんコントローラーやメモリーカード、電源コードまで茶色で統一させている。
俺たちは笑い転げた。何という偶然だ!
俺は言った。
「やっぱ買い替え時だと思ってさ。
 家電屋で店頭に並んでいて安かったし・・・。いいゲーム機だろ?」
「すばらしいね」
マッコイは答えた。

それから俺たちはテレビをつけてサッカーを見た。
その間、新品ゲームのカードボードから茶色のユニットをくり抜いていた。
茶色いマリノスが勝ったかどうか、もう覚えていないが
すごく快適な時間だったし、すっかり安心していた。
まるで、街の流れに逆らわないでいさえすれば、安心が得られて、
面倒に巻き込まれることもなく、生活も簡単になるかのようだった。
茶色に守られた安心、それも悪くない。

もちろん、向かいの歩道ですれちがった小さな女の子のことも頭に浮かびはした。
足元でばらばらになった白い洋服の人形のために泣いていた。
だけどあの子だってきちんと話をすれば、
おもちゃ遊びが禁止されたわけじゃなくて、茶色いやつを探せばいいだけだとわかる。
人形だって見つけられる。
そうすれば、俺たちと同じように、規則を守ってるんだと安心して、
親に叩き壊された昔の人形のことなんてすぐに忘れるだろう。

(・・・明日へ続く)
by mccoy1234 | 2005-09-06 00:12 | Trivia
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