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戦場の一年

戦場の一年_d0025070_23301064.jpg白水社uブックスはときどき蜂の一刺しのように
エッジの効いた本を出してくれますが、これもそのひとつ。
イタリアのエミリオ・ルッスって人が書いた
第一次世界大戦の戦争文学です。
あの当時の“大戦(グランデ・グエツラ)”について
南チロル戦線(たぶん)に従軍した作者が
自ら経験した出来事を書き記しています。

果てしない塹壕戦の中、彼が見たものは…

近代戦に思考がついていかず「新兵器」に頼り、無謀な前進を命じる将軍
状況を無視した命令を出す司令部への怒り、そしてどうにもならない諦め
戦場の地獄を知らない能天気な一般市民に対する軽蔑
敵兵との一瞬の邂逅、そして戦友との刹那の別れ

それはつまり、戦争と人間が綾なす阿呆らしさ。





「おそろしいのは、奴らが俺たちの命の上に塗料で祖国の名前を刷り込んだあげく、
 俺たちを羊みたいに屠殺場に連れて行くことだ。」(本文p.214より)


いいよねー、こういうセリフ。これぞ戦争の文章だよ。
だけどネガティブな悲愴表現もなく、これ見よがしのグロもなく、鬱々とした狂気もなく。
ラテン人らしいウィットとヒロイズム、そしてヒューマニズムが滲み出たままに
なんとなくあっけらかんとした文体で書かれています。
それでいて一つ一つのエピソードが、なかなか心に染み入ってしまう。
なんか、そのまま、TRPGの戦場シナリオネタにも使えそうだ。(・∀・)

無学だけど陽気な古参兵の≪フランチェスコ叔父さん≫とか
若干共産主義入った、批判屋の同僚将校オットレンギとか
「両軍の兵士への酒の配給を絶てば戦争は終わる」とうそぶくアッバーティ中佐とか

登場人物が、いかにもイタリア映画に出てくるような方々で、ニヤニヤさせられます。

テーマ的にも希少価値ですし(こんなマイナーな戦線、誰もしらねえよ!)
「ちょっと息抜きに戦争小説を読んでみたい」という人には、
オススメなのではないかと。新書サイズなので長さもお手ごろよ!

次はなに読もうかな…。

(^v^)ノ

戦場の一年_d0025070_0481478.jpg

by mccoy1234 | 2006-07-18 23:34 | Reading
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