白水社uブックスはときどき蜂の一刺しのように
エッジの効いた本を出してくれますが、これもそのひとつ。 イタリアのエミリオ・ルッスって人が書いた 第一次世界大戦の戦争文学です。 あの当時の“大戦(グランデ・グエツラ)”について 南チロル戦線(たぶん)に従軍した作者が 自ら経験した出来事を書き記しています。 果てしない塹壕戦の中、彼が見たものは… 近代戦に思考がついていかず「新兵器」に頼り、無謀な前進を命じる将軍 状況を無視した命令を出す司令部への怒り、そしてどうにもならない諦め 戦場の地獄を知らない能天気な一般市民に対する軽蔑 敵兵との一瞬の邂逅、そして戦友との刹那の別れ それはつまり、戦争と人間が綾なす阿呆らしさ。 「おそろしいのは、奴らが俺たちの命の上に塗料で祖国の名前を刷り込んだあげく、 俺たちを羊みたいに屠殺場に連れて行くことだ。」(本文p.214より) いいよねー、こういうセリフ。これぞ戦争の文章だよ。 だけどネガティブな悲愴表現もなく、これ見よがしのグロもなく、鬱々とした狂気もなく。 ラテン人らしいウィットとヒロイズム、そしてヒューマニズムが滲み出たままに なんとなくあっけらかんとした文体で書かれています。 それでいて一つ一つのエピソードが、なかなか心に染み入ってしまう。 なんか、そのまま、TRPGの戦場シナリオネタにも使えそうだ。(・∀・) 無学だけど陽気な古参兵の≪フランチェスコ叔父さん≫とか 若干共産主義入った、批判屋の同僚将校オットレンギとか 「両軍の兵士への酒の配給を絶てば戦争は終わる」とうそぶくアッバーティ中佐とか 登場人物が、いかにもイタリア映画に出てくるような方々で、ニヤニヤさせられます。 テーマ的にも希少価値ですし(こんなマイナーな戦線、誰もしらねえよ!) 「ちょっと息抜きに戦争小説を読んでみたい」という人には、 オススメなのではないかと。新書サイズなので長さもお手ごろよ! 次はなに読もうかな…。 (^v^)ノ
by mccoy1234
| 2006-07-18 23:34
| Reading
|
関連ページ
カテゴリ
以前の記事
2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||